【初夏号】淡い想い出
「フーテンの寅さん」はよく観に行きました。
ドジなコトをしたり、フラれたりの場面になると、観ている人がドッと笑います。
しかし笑えぬ僕がいました。
寅さんは、人が好くて、情にもろくて、どこか抜けている。
そんな寅さんを、自分よりもマヌケで、ドジな人間だという優越感で笑っているように思えて、僕はとても笑えなかったのです。
いっしょに観に行っていた友達に、お前可笑しくないのか?と怪訝そうに問われ、イヤ~そんなことはないよと思わずゴマ化していました。
当時僕は、青雲の志?を持って勤めを辞めたのは良いけれど、現実の厳しさにぶつかる度に自信を無くし、フラフラの生活を送っていました。
そんな僕ですから、仕事も上手くいかず、つき合っていた彼女にもフラれ、何とかしたいという気持ちだけは人一倍強く、思うようにならないやるせない気持ちの中でした。
そんな僕にとって、寅さんが笑われるのは、まるで自分が笑われている様でたまらなかったのだと思います。
みんなが笑えば笑うほど悔しくなったのを今でもよく覚えています。
そんな僕に一歩進むことの転機が訪れ、存在を認めて貰えるまで続いていた青春の「淡い想い出」です。